まずは知って欲しいこと
排卵障害
排卵障害が起こる原因について考えられるもの
1.内分泌機能の低下
視床下部の機能が低下して、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)などの分泌が不充分になり、その結果、排卵が起こりにくくなる症状です。多くは原因不明です。診断方法:血液検査で血中ホルモンの値を調べることで診断されます。LHやFSHの値が低い場合には、視床下部や脳下垂体の機能低下が疑われます。
2.脳下垂体の機能低下
脳下垂体の機能が低下して、脳下垂体ホルモン(LH、FSH)の分泌が不充分になり、その結果、排卵が起こりにくくなる症状です。高プロラクチン血症の場合も排卵障害が起きることがあります。
PRL=乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)
診断方法
血液検査により診断されます。
3.多嚢胞卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞卵巣症候群とは
無排卵症の原因として最も多いものです。
慢性的な男性ホルモン過剰状態が特徴で、高アンドロゲン性慢性排卵障害とも呼ばれます。卵巣にたくさんの小嚢胞が見られ、主席卵胞が育ちにくくなるため排卵が起こりにくい。
■診断方法
超音波検査で、卵巣にたくさんの小嚢胞が見られる場合に診断されます。卵胞が連なって見えるので、ネックレスサインとも呼ばれます。血液検査では、高男性ホルモンの他に高LH、高PRLがみられることがあります。
■自覚症状
月経周期が長くなるか、無月経となります。PCOSの方は月経が始まったころから生理不順なことが多かった、とよく言われます。
症状の強い例では、無排卵に加えて、肥満や、ニキビ、多毛などの男性化がみられます。
多嚢胞卵巣症候群の方で肥満の方は、将来、糖尿病を合併しやすいと考えられています。
4.卵巣の機能低下、異常
■卵巣性無排卵
卵巣の中には、卵子のもとである原始卵胞がたくさんつまっていて、片側の卵巣に1個の卵胞が発育し、やがて卵胞が破裂し排卵が起こります。
この原始卵胞が極端に少なくなり、排卵が起こりにくくなる状態を、卵巣性無排卵といいます。(無排卵症の中でも最も治療の難しいタイプです)
血液検査で診断されます。卵巣の中の原始卵胞が少なくなると、血液中のFSH(卵巣刺激ホルモン)が増加します。FSHの基礎値(生理周期2~5日目の値)が10IU/L以上は、原始卵胞の減少を意味しています。
■黄体化非破裂卵胞症候群(LUF)
卵胞が成長して排卵期が来ても、卵胞が破裂せず、排卵が起こらないままに卵胞が黄体へと変化する症状です。基礎体温は2相性となり、排卵が起こっているように見えます。
超音波検査で連続して卵胞を観察することで診断されます。
5.高プロラクチン(PRL)血症
■高プロラクチン(PRL)血症とは
プロラクチン(PRL)とは、乳汁分泌ホルモンとも言われるもので、出産すると脳下垂体から大量に分泌され、母乳が出る仕組みになっています。
また大量に分泌される授乳期間中は排卵が起こらなくなります。
高プロラクチン(PRL)血症とは、このプロラクチンの分泌が増加する症状で、無排卵や黄体機能不全の原因となります。高プロラクチン血症の原因としては、ストレス、甲状腺機能低下、多嚢胞卵巣症候群、脳下垂体のプロラクチン産生腫瘍などが考えられます。胃薬や精神安定剤などの薬剤が原因の場合もあります。
■診断方法
血液検査でプロラクチン値を調べます。この値はかなり変動しやすく、心理的なものやストレスも影響します。初診時や内診後、あるいは乳房の触診の後では値が高く出る場合がありますので、治療の前には再検査をします。